secondfiddle@人柱日記

ま、パソコンと車とカメラとそれから・・・・・・

カローラフィールダー狂想曲

出囃子、炭坑節。
え〜、毎度ばかばかしい噺に、一席付き合ってもらいます。
「おう、ご隠居、いるかい」
「やあ、与太郎かい、まま、こっちにおあがりよ」
「すまねえなご隠居、ちっとおいらの話を聞いておくれよ」
「何だい、話ッてぇのは」
「こんまえ、車を買ったといったろ?」
「ああ、なんでも、安っすい見窄らしい車、と言う話は聞いておるがの」
「何だとぉ、安い見窄らしい車ッてぇのは、おう、喧嘩売ろうってのか?」
「安っすい見窄らしい車でも安っすい見窄らしい車には変わりは無い」
「コン畜生め、だから出すものも出さねえしみったれの大家、ッて言われるんでぇ」
「しみったれ、とはなんだ、しみったれって……お前さんこそ喧嘩売ってるんじゃないか」
「いや、そんなことよりね、納車が早まりそうなんでぇ」
「ほう、そりゃ、安っすい見窄らしい車でもおめでたい」
「なんでぇなんでぇ、ことある毎に安っすい見窄らしい車、安っすい見窄らしい車ッて。まあ、聞いておくれよ。何でも南関東に化け物が出たって」
「化け物ぉ?」
「いや、化けもんじゃねえ、出物だ」
「化けもんと出物じゃ雲泥の差だな」
「キャンセルの車が出たんで、扱いに困って相談があったんだってよ。二つ返事で、くれ、ッて言っちゃったい」
「気の早い奴だな、その車を譲ってもらおうという寸法かい?」
「さすが大家、察しが良いねえ。11月中旬には手に入りそうなんでぇ。いやあ、もっと早いかもなあ。ぐふふ」
「まてまて水を差すようだがな与太郎、よ〜く考えてみなさい」
「なんでえ?」
「その車は新古車じゃないのか」
「なんでえ、新古車って」
「なんだしらんのか。よ〜く聞きなさいよ、一旦登録を掛けたんだが、諸事情によりオーナーが手放した。そこで始末に困って口利きをした。こっちのディラーとしては滅多にないチャンス。ただでさえ五月蠅い与太郎のことだ、早いとこやっちまってせいせいしろってぇってな」
「なんだ、せいせいって……だからなんだい。こっちは良い気持ちになっているのによ」
「頭が悪い奴だな、あるいは型落ちかもしれんぞ。いいか、どちらにしろろくなもんじゃない。言ってみれば立派な中古車じゃ」
「ちゅ、中古車ぁ? おうおう、大家、おいらに中古車を売りつけようって魂胆かい。ただじゃおかねえぞ、コン畜生てやんでぇべらんめぇ」
「ちょっとちょっと、冷静に冷静に。頭を冷やせ与太郎や、何もアタシが売りつけようって訳じゃない」
「安っすい見窄らしい車でおまけに中古ッてか」
「今度は僻むか……。まま、ひがむな与太郎。販売台数を上げるために販売店がノルマを上げるためにワザと販売したように見せかけると言う事をきいたことがある。この場合は手つかずの新品だぞ」
「え? そんな事がある? こりゃあ嬉しいな♪ もしかして1台注文したけど手違いで2台来た、そこで余った1台をおいらに回すっちゅう寸法」
「……まず、そんな事はあんめえ。よしんば、新車としてもだよ」
「新車としても?」
「何か、重大な欠陥があるとも言い切れない。そこでこっちに回すのかもしれん」
「ジュウダイナケッカン〜?」
「例えば、だ」
「例えば?」
「エンジンがない、とか」
「じぇじぇ!」
「タイヤがないとか」
「じぇじぇっじぇ!」
「何処の生まれだ、与太郎? それより、冷静に考えてみなさい、時間がかかってもまっとうな新車の方が良かろう。今からでも遅くない取り消しな」
「分かったよ大家、取り消してくらあ……いやでも待っておくんなまし」
「急に女言葉か……何だね」
「エンジンが無かったらどうやってこっちに持ってくんですかい。タイヤがなければ動かせんでしょう。そこんとこどうなんだい大家」
「陸送という手がある。専用トレーラーに乗せて持ってくる。エンジンがなくても乗せることは出来る」
南関東から? それにしても乗せるにも動かすでしょう。いくら与太郎と言ってもそれくらい察しがつかぁ。で、そこんとこどう何だい?」
「う〜む」
「う〜む、って考え込むなよ」
「分かった」
「分かった?」
「ハンドルがない」

……お後がよろしいようで。