secondfiddle@人柱日記

ま、パソコンと車とカメラとそれから・・・・・・

Expresszip plus

え〜毎度ばかばかしいお話しに一席お付き合いください。


貧乏長屋の家主でご隠居の元に大工の熊五郎と弟子の与太郎が血相変えてご隠居の元に急いでおります。
「てぇへんだてぇへんだ、ご隠居〜ご隠居〜」
熊五郎の声に与太郎が「ごいんきょ〜え〜ごいんきょ〜」
「前回とおんなじギャグ飛ばすんじゃねえ、馬鹿。それよりいるかい、ご隠居」
戸を荒々しくがらがらっ、と開けるってぇと、二人の先には長火鉢の前で優雅にキセルを吹かしているご隠居がおります。
「熊公に与太かこっちにおいで」
そう言いながらキセルをひっくり返し、煙草の灰を長火鉢へ、ぽ〜ん。
「何優雅にしてやがんだよ、それより与太郎のパソコンを見てやってくれよ」
「まあまあ、そう急かすでない」
そうこうしているうちおかみさんがお茶を持ってやって参ります。
「おかみさん、ご隠居、どうしちまったんで?」
「イヤなにねえ、最近歌舞伎にハマっちまってねえ。つい最近も白浪五人男なんか見たもんだからねえ」
キセルをアタマ上でくるくる回すご隠居。
「知らざぁ言ってきかせやしょう。浜の真砂と五右衛門が、歌に残した盗人の、種はつきねぇ七里ヶ浜・・・・。弁天小僧菊之助ったぁ俺のことでぇ〜〜〜」
ご隠居、見得を切る。呆れた顔でご隠居を見る熊五郎
「弁天小僧だの小便小僧だの、そんの後にしてくんねえかよ。それよかスタートボタンを押すとこんなのが出てきやがって、先に進めやしねえ」
「小便小僧とは何だ小便小僧とは」
ご隠居の憤慨にも我関せず、と言った風情の熊五郎
「そんなこったぁどうでも良いから与太のパソコン、見てくれよ」
「ほうほうどれどれ。なになに、”お使いのExpress Zipのお試し期間は終了しました”とな? ”継続してご使用いただく場合には、ソフトウェアをご購入ください”……」
「お、ちったあ、やる気になったか」
「あはは、やる気のジャーミィ」
「止めろ馬鹿、茶々いれんじゃねえ」
熊五郎与太郎の頭を叩く。
「勘弁しれくれよぉ。これ以上馬鹿になったら、どうすんだよぉ」
与太郎の泣き声に「大げさな野郎だな……それ以上の馬鹿はいねえよ。それよか、ご隠居、原因は?」
「Windows10のアップデートしただろう?」
「へ? そうでさあ。この馬鹿が、いやいや、与太郎が2時間かかってアプデしたとか」
「それじゃ」
「へ?」
「それじゃよ」
「ほ?」
そこでまたご隠居、見得を切る。
「問われて名乗るもおこがましいが、生まれは遠州浜松在……」
そこでハタと気がつき、言葉につまるご隠居。
「ええっと、婆さんや、次は何だったっけかな」
「やだやだ、だからアンタはにわか歌舞伎かぶれって言われてんだから……十四の時から親に離れ……でしょ、それより与太さんが困ってるんだから何とかしておやりよ。アンタ、分かってんでしょ?」
「全く婆さんにゃ頭が上がらんなあ。まあ、ホントかどうか疑わしいが、アプデの最中にコイツが紛れ込んでくるという噂を耳にしておる。いわば押し売りソフトじゃな。こんまえも八五郎が同じ状態で担ぎ込まれてな」
素っ頓狂な声を上げる与太郎
「担ぎ込まれた? お寺ですかい、番所ですかい。八五郎、とうとう死んじまったぃ。痛ッ」
「与太、黙ってろ。お前が喋るとこんがらがっちまうじゃねえか、で、死んだ八五郎、……じゃねえ、見ろ、うつちっまたじゃねえか……それよかご隠居、その先を聞きてえ」
「スタートボタンを押してコンパネに行きたくとも、コイツが邪魔して閉じちまうんだな。迷惑は話じゃ。色々考えてひらめいたのがスタートボタンの右クリ。するとどうじゃ。ちゃんと反応するじゃあ〜りませんか」
「ギャグはいいから先に進めてくんねえか」
「これ幸い、と一番上の”プログラムと機能”からコイツを探し出しアンインストールしたら見事正常に戻った、と言う次第」
「じゃ、やっておくれよ」と与太郎
「やることは簡単じゃが」
そう言いながらご隠居は袖の下から親指と人差し指で丸を作る。
「なんですか〜?」
「分からん奴らじゃな。オゼゼが必要だ、どうだ、店賃半月分で手を打とうじゃ無いか」
熊五郎憤る。
「なんだよ、ご隠居。店賃三ヶ月もためてるんだ。さらに半月出せぇ? この強突く張りッ、鬼、人でなしッ」
「歌舞伎を見に行くにもオゼゼが足りなくてなあ」
お上さん、ご隠居のアタマを思い切り叩く。
「なにすんだ」
「なんだいなんだい黙って聞いてりゃあ、歌舞伎歌舞伎って。大体弁天小僧は次に出てくんのッ。最初は日本駄衛門が口上を述べてから次に弁天小僧が喋るんだよ、順番が逆だよお前さん」
「分かった分かった、お前には頭が上がらんなあ。良しここは婆さんの頼み、引き受けてやろうじゃないの。みておれ。えいッやあッ」



すったもんだがありましたが、与太郎のパソコン、見事解決いたしました。聞けば与太郎、ウィルス対策ソフトをいれておりませんでした。Windows10付属のdefenderダケでは防ぎきれないようです。とはいえ、他のウィルスソフトがあったからと言って安心できますまい。
明らかなウィルスでしたらdefenderでも防いだと思われますが、立ち振る舞いが普通のソフトと同じですので、監視の目をすり抜けたのでございましょう。この様な押し売りソフトにもご用心、と言うような一席、お後が宜しいようで。